高尿酸血症(痛風)
とは
高尿酸血症、といってもどんな症状の病気なのかイメージしにくいかもしれませんが、「痛風」を引き起こすことがあるのも特徴の一つです。具体的には血中の尿酸の濃度(尿酸値)が基準値(7.0mg/dl)を超えて高い状態にあるのが高尿酸血症で、それにより様々な障害が現れます。
高尿酸血症は圧倒的に男性に多い病気で、男女比では9:1となります。これは女性ホルモンに腎臓から尿酸の排泄を促進する働きがあるためで、女性ホルモンの分泌が減少していく50歳以上では、傾向として男女差が少し縮まります。
高尿酸血症(痛風)の原因
尿酸とは、食物に含まれるプリン体と呼ばれるものを分解した際に産出される、いわば老廃物です。プリン体は細胞の新陳代謝の際や、体を動かすエネルギーなどとして重要な役割を果たす物質です。尿酸は腎臓から尿として排出されますが、プリン体を含む食物の摂り過ぎによる尿酸の過剰産出、または腎臓の尿酸排出機能の低下、もしくはその両方によって尿酸値は上昇してしまいます。
プリン体が多く含まれる食物としては、鶏卵や魚卵、肉(とくにレバー)、イワシやカツオなどの魚(干物、煮干し、鰹節も含む)などが挙げられます。また甘い飲み物に含まれている果糖は体内で分解される時に尿酸値を上げる作用があるとされており、ジュースや清涼飲料水の摂り過ぎには注意が必要です。またビールにはプリン体が多く含まれていますが、アルコール自体に尿酸の産生量を増やし、排泄を阻害する働きがあるほか、利尿作用によって体内の水分量が減少し尿酸値が上昇しやすくなります。
高尿酸血症(痛風)の症状
高尿酸血症自体に自覚症状はほとんどありませんが、尿酸値が高い状態が続くと、尿酸は水に溶けにくいため血液中で固まり、針状に結晶化していきます。これが関節(足の親指の付け根 など)に蓄積すると白血球の攻撃などにより激しい炎症反応が起こります。これが痛風です。
痛風は発症すると患部に腫れや激痛を伴う「痛風発作」を引き起こしますが、足の親指の付け根以外にも、足関節、足の甲、アキレス腱の付け根、股関節、手関節にも激痛発作が起こることがあります。この痛風の発作は数日で収まることが多いのですが、高尿酸血症を治療せずにそのままにしておくと、再発を繰り返し、関節が変形してしまうという危険があります。
そのほか高尿酸血症の状態が続くと、外耳の一部など身体の様々な部分に、痛風結節と呼ばれる結節ができる場合があります。また尿酸が腎臓に溜まると尿路結石が発症することがあり、また腎臓が障害されて慢性腎臓病になる場合もあります(痛風腎)。また高尿酸血症のある方では、脳卒中、心筋梗塞・狭心症などのリスクも高まることが知られており、尿酸値が高い場合は、痛風の発作が出ていなくとも尿酸値を下げる治療をしていく必要があります。
高尿酸血症(痛風)の治療
尿酸値を下げていくためには、まず食生活を改善し、プリン体を多く含む食品を摂り過ぎないようにすることが重要です。またアルコールは控えめにします。アルコールには利尿作用があり、体内の水分量が減って尿酸値が上昇しやすくもなります。また有酸素運動は尿酸値を下げる効果が期待できます。一方、無酸素運動をすると尿酸が溜まってしまいます。運動は軽いウォーキングなどに取り組んで、肥満を解消し、尿酸値が上がりにくい体にしていくことが重要です。
食事療法や運動療法を行っても尿酸値の改善がみられない場合は、薬物療法も行っていきます。使用する薬としては、尿酸の生成を抑える薬、尿をアルカリ化する薬、尿酸の排泄を促す薬などがあり、症状に併せて処方していきます。また痛風の発作が出ている際は、関節炎を抑える薬として、主に非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)を使用していきます。なお痛みの症状が治まるまでは、上記の尿酸値を下げる効果のある薬は使用しません。